ちいちゃんの昔話

昔の私の方がちょっぴし好きかな?

どっちの私が本当?  
   
「ひまわり」1999年9月第61号より  
    私は子供の頃から一人でのんびり裏山に行き、クリ、シイの実を拾っては、その山の静けさや木洩れ陽を楽しんでいた。そうかと思えば部屋の隅で本を読んでいる子供だった。人前に出ることが苦手であった。クラス又は大勢集まる場所などは極力避ける。バーゲンで物が安くて欲しくても、決して行かない。やむを得ずどうしても出向く場合は、それがデパートの中でも目的の売場へ一直線。用事が終われば、真っ直ぐ寄り道もなく帰って来る。
 今も昔も自分の持っている枠からはみ出すということが出来ず、不器用かつ協調性が無いのかしらと思うことがある。しかし、気の合う、好きな友人達とは一緒に居たいし、遊びに行きたいし、行く私。
 今頃では、身体を自由に動かせないという環境の元、選べるとか避けられないという現状の中、冒頭に書いたようなことは、今では夢のまた夢である。一人で山に行きたいと考えても、車イスの私には無理であり、部屋で一人読書をと考えても、本が重くて疲れる。人前に出ることは苦手なのに、介助者が大勢やって来る。その方々に、一から十まで、こと細かく説明し、日常生活に必要なことをエンドレスのように(「出来るならばテープに録音して流しておきたい」と思うこと、しばしばある。)お願いしている。
 以前より、ずっと人に説明することに慣れて、少しは上手になっていると自分では思っている。現実には人にたくさん語りかけることでしゃべり下手だと言えないかもしれない。
 皆さんに誤解されたり、理解されなかったりする。それらを放置しておくわけにはいかない。自分のことだから…。一所懸命に私の気持ちを伝える。
 自然体の気持ちはどっち…? 昔の私の方がちょっぴし好きかな?
 
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小柴 千鶴

えがお株式会社代表取締役、NPO法人夢ハウス理事長。 27歳のとき進行性筋ジストロフィー発症との診断を受ける。 さまざまな困難を乗り越えながら「ITであれば障害者でも仕事ができる」と思いたち「小規模作業所夢ハウス」をスタート。

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